手塚 治虫(てづか・おさむ)滅びるものを愛してゆく

手塚治虫 氏 『未来へのことば』 以下抜粋

私のように
青春時代を 戦争中に過ごした人間には

一種の 虚無主義がある。

やれ、大東亜共栄圏だ、
八紘一宇だといわれて

教練を やらされ
友人も ずいぶん 死んだ  という絶望感、


裏切られた という気持ちがある。
☆     ☆     ☆

私が〔教室で〕 教師の似顔絵を描いていましたら、
軍事教官に 職員室に連れて行かれまして、

ギラリ

と 抜くんです。

鼻先に 突きつけて
「斬るぞ」 
と いうんですよ。

その教官の刀は 竹光(たけみつ)だと聞いていたので
安心していましたら、

あとで
本物だとわかった(笑)


☆     ☆     ☆

ぼくのように 体力のない 弱い子たちは

国民体育訓練所 という
一種の 強制収容所(ラーゲリ)に 入れられた。

〔けれども〕 ぼくは 耐えかねて


4ヶ月目に
座ぶとん 5枚で
鉄条網を はさんで、 くぐり抜け

家に 逃げ帰ったのです。

☆     ☆     ☆

ぼくは あんまり 他人を信じない

これは 戦争中
大本営をはじめ
あまりにも だまされすぎたせいだ とも思うが

それだけに
自分が 最高に可愛い

☆     ☆     ☆

”正義” の名のもとに、

国家権力によって
人々の上に 振り下ろされた凶刃を
ぼくの目の黒いうちに 記録しておきたい

と願って描いたのが 『
アドルフに告ぐ』なのです

これだけは 断じて
殺されても 翻(ひるがえ)せない主義がある

それは

戦争は 御免だ ということだ

☆     ☆     ☆

どろろ』では ”戦後”のイメージを出したかった、

”浮浪児”とか 戦争の傷跡(きずあと)を。

主人公の2人に
自分ながら惚れぬいたのも
めったにないことだった。

☆     ☆     ☆

ぼくは 自然を 愛している

しかし、いくら惜しんでも 滅びるものは滅びると
ぼくは ワリ切っている

ヒューマニズムについても 同様でしょう

つまり ぼくは


ワリ切って つっぱしりながら

滅びるものを 愛してゆく

☆     ☆     ☆

東山魁夷 自然-【巡り合い】-モノ--大切にする心

ブラックジャック 10話 火の鳥伝説 
YouTubeで消されていたら、
こちらで見られる場合あり。

---それで大切な命を失ったら 愚かだと思わないか
---永遠の命なんて ないんだ